臨床現場で最も頻繁に用いられる二大フォーマットが「SOAP」と「フォーカスチャーティング(Focus Charting / FDAR)」です。それぞれの特性を理解し、病状の変化やケアの目的に応じて使いこなすことが求められます。
1. SOAP形式の書き方と臨床例文
SOAPは患者の「問題(Problem)」ごとに情報を整理する手法です。看護計画に基づいた経過記録や、病態変化に対する看護問題の評価記載例として最も適しています。
- S(Subjective data / 主観的情報):患者や家族が話した主訴・訴え(例:「昨日から右の傷口がズキズキ痛む」)。
- O(Objective data / 客観的情報):バイタルサイン、検査データ、看護師が視診・触診等で得た身体所見。
- A(Assessment / 看護判断・評価):SとOを統合・分析した結果導き出される現在の状態推測やリスク判断。
- P(Plan / 看護計画):アセスメントに基づき実施する今後のケア、医師への報告、観察項目の変更など。
【SOAP記載例:術後創部痛の増強時】
S:「息を吸うと右の傷が強く痛んで、ベッドから起き上がるのが怖い」(患者談) O:創部ガーゼに出血・浸出液の汚染なし。創周囲に軽度の発赤・熱感あり、離開なし。 NRS(疼痛スケール):6/10。バイタルサイン:BP 138/84mmHg, HR 88回/分, SpO2 97%(room air)。 呼吸運動は浅表性、離床動作時に顔面苦悶表情あり。 A:術後第1病日であり創部痛の増大に伴う呼吸抑制および離床遅延リスクが高い。 局所感染兆候は現時点で否定的だが、疼痛コントロールによる早期離床の促進が必要。 P:指示箋に基づき鎮痛薬(アセトアミノフェン点滴)を投与。 投与30分後に再度NRSおよびバイタルサインを評価し、理学療法士と連携して端座位訓練を実施する。
2. フォーカスチャーティング(FDAR)の書き方と臨床例文
特定の出来事やイベント(転倒、突発的な発熱、処置など)に焦点を当て、時間経過に沿ってスピーディーに記述する手法です。
- F(Focus / 焦点):記録の対象となる事象、症状、患者の懸念事項。
- D(Data / 経過データ):そのフォーカスに関する主観的・客観的データ。
- A(Action / 看護介入):看護師が実際に行った対応、処置、医師への報告。
- R(Response / 患者の反応):介入後の患者の状態、症状の変化、結果。
【フォーカスチャーティング記載例:急なめまい・ふらつき発生時】
【F】急な立ちくらみ・ふらつきの出現 【D】14:30、ポータブルトイレ使用のため立ち上がった際に「視界が暗くなり足元がふらついた」とナースコールあり。 起立時BP 92/58mmHg, HR 96回/分(臥床時BP 124/76mmHg, HR 72回/分)。顔面蒼白あり、冷汗(+)。 【A】直ちに水平位にてベッド上安静を保持。下肢挙上を実施し、主治医〇〇医師へ起立性低血圧の疑いを報告。 補液の指示を受け、生食250mlの急速投与を開始。 【R】15:00、BP 114/70mmHg, HR 76回/分へ回復。「めまいは治まり、気分も落ち着いた」と発言。自力歩行は一時見合わせ、見守り歩行へ変更。