サリーとアンの課題は、人形劇やイラストを用いて実施される極めてシンプルなストーリー形式の認知実験です。考案したのは、イギリスの発達心理学者であるサイモン・バロン=コーエン(Simon Baron-Cohen)、アラン・M・レズリー(Alan M. Leslie)、そしてウタ・フリス(Uta Frith)の3名。1985年に発表された記念碑的論文『自閉症児は「心の理論」をもつか?(Does the autistic child have a "theory of mind"?)』の中で提示されました。
実験の具体的なプロトコルは、次の4つのステップで進行します。
- 部屋の中にサリーとアンという2人の女の子(人形)がいる。サリーは「カゴ」を、アンは「ハコ(箱)」を持っている。
- サリーは持っていた大切なボールを自分の「カゴ」の中に入れ、部屋を出ていく。
- サリーがいない間に、アンがカゴからボールを取り出し、自分の「ハコ」の中へ隠してしまう。
- サリーが部屋に戻ってくる。ここで被験者の子どもに対して質問が行われる。
テストの核心となる質問は次の問いです。
「戻ってきたサリーは、ボールを探すために最初にどこを見る(探す)でしょうか?」
この問いに対する正解は「カゴ」です。なぜなら、サリーは自分が部屋を出ている間にアンがボールを移動させた事実を知らないため、「ボールはカゴに入れたままのはずだ」という誤った思い込み(誤信念)を抱いているはずだからです。
しかし、3歳児や一部の特性を持つ子どもたちは、「ハコ」と答えます。自分が「ボールがハコに移された現場」を目撃しているため、「サリーも自分と同じように、ボールがハコにあると知っているはずだ」と無意識に同一視してしまうのです。この現象こそが、本課題が暴き出す認知の分岐点です。