なぜ、図面上では完璧に計算されていたはずの幹線が過熱し、現場事故を引き起こすのか。最大の盲点は、計算前提となる「周囲温度」と「集積放熱阻害」の二重苦にあります。
JCS 0168などの規格が定める基底温度は周囲温度40℃です。しかし、炎天下の屋上に設置された金属製トラフ内部や、密閉された変電室の天井付近、太陽光が照りつけるアスファルト直下の地中管路では、外気温が38℃の時点で内部温度が50℃〜55℃以上に達することも珍しくありません。
架橋ポリエチレン絶縁体の最高許容温度は90℃に規定されており、許容電流値はこの上限に到達しない熱平衡状態から逆算されます。周囲温度が上昇すれば、許容できる導体発熱(ジュール熱)のマージンは削られます。これを示すのがCVTケーブル周囲温度低減係数であり、計算式は以下の通りです。
低減係数 K = √((90 - θ) / (90 - 40)) (※θ:実際の周囲温度)
周囲温度が50℃に上昇した場合、低減係数は約0.894、60℃では約0.775まで激減します。つまり、基底値が215AのCVT60sqであっても、60℃の環境下ではわずか166Aしか流せません。
さらに見落とされがちなのが、ケーブルラックやピット内で複数系統が密集する「多条布設(集積布設)」の影響です。隣接する幹線同士がお互いの熱を奪い合うことで熱の逃げ場を失い、多条低減係数(3条集積で概ね0.7〜0.8)が追い打ちをかけます。温度低減係数0.89と多条低減係数0.80が重複適用された場合、合成低減係数は約0.71。カタログ上のスペックから実に3割近い許容容量が消失する現実を、設計段階で組み込まなければなりません。