ライフハック系動画やSNSで安易に拡散されている「お湯と重曹、あるいは消毒用エタノールを使えばあらゆる接着剤がキレイさっぱり落ちる」という言説には、大きな誤解と化学的な限界が存在します。
第一に、ひと口に接着剤と言っても、主成分によって硬化のメカニズムが全く異なります。小学校の図工で使われる木工用ボンド(酢酸ビニル樹脂系)は水溶性ポリマーであるため、60℃以上のお湯や家庭用洗剤でふやかすことで簡単に落とせます。したがって、ガラスについた固まったボンド 落とし方であれば、熱湯で濡らしたキッチンペーパーを数分間パックするだけでゼリー状に戻り、スルリと拭き取れます。しかし、これを瞬間接着剤(シアノアクリレート系)や2液混合エポキシ接着剤に試しても、お湯だけで完全に溶かすことは化学構造上不可能です。
第二に、消毒用エタノール(アルコール)の万能神話です。エタノールは油分や未硬化のシリコンシーリングには有効ですが、完全に重合硬化を完了した瞬間接着剤に対しては溶解力が著しく不足しています。数十分浸漬しても表面がわずかに曇る程度で、肝心の接着層を崩壊させるには至りません。「エタノールで取れる」と信じて力任せに擦り続けた結果、下地を傷つけてしまう二次被害が多発しているのが実情です。