この病理にいち早く警鐘を鳴らし、日本中で議論を巻き起こしたのが脳科学者の中野信子氏だ。同氏が執筆し、株式会社アスコムから刊行された新書『正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?』は、発売直後からベストセラーを記録。従来のモラル論では説明がつかなかった「なぜ善意の人が他者を追いつめる悪魔に変貌するのか」という謎に対し、脳の構造的アプローチから解明を加えた。
中野氏は、人間が本来持っている「集団を守るための攻撃性」が、現代の過剰な情報環境下で暴走していると指摘する。かつて村社会を維持するために役立っていた「異端者を排除する本能」が、地球規模でつながるネット世界で過度にあらわになった結果だ。
この書籍の爆発的ヒットは、デジタルメディア・出版産業全体にも大きな波及効果をもたらした。「正義」という言葉の陰に隠された人間の加虐性と依存性を暴く切り口は、書籍の枠を越え、テレビの報道番組やWebメディアの特集記事でも主要テーマとして扱われるようになった。