アイコスを吸い始めてから、「階段を上がると息が切れる」「胸のあたりがドクドクと激しく脈打つ」という訴えが循環器内科の臨床現場で散見されます。この動悸や息切れは、決して気のせいではありません。主な原因は、エアロゾルを通じて超高速で体内吸収される高濃度ニコチンです。
ニコチンが肺胞の毛細血管から血液中に入ると、わずか7秒前後で脳へ到達します。交感神経節を強烈に刺激してアドレナリンやノルアドレナリンの分泌を促すため、心拍数が跳ね上がり、末梢血管が瞬時に収縮します。その結果、血圧が急激に上昇し、心臓は冠動脈の血流が狭まった状態で過負荷駆動を強いられることになります。
日本循環器学会の研究報告でも、加熱式タバコのエアロゾル吸引直後に血管の内皮機能(血管を柔軟に広げる能力)が顕著に低下することが示されています。これは動脈硬化を急速に進行させ、将来的な狭心症や急性心筋梗塞のリスクを確実に押し上げる生理現象です。
また、ネット上の掲示板やSNSで頻繁に報告される「喉の奥の鋭い痛み」「止まらない乾いた咳」の原因は、蒸気を発生させる溶剤である植物性グリセリン(VG)やプロピレングリコール(PG)の加熱吸入にあります。高温の微小液滴が気管支粘膜の水分を奪い、繊毛運動を麻痺させることで慢性的な局所炎症を引き起こすため、紙巻きタバコとは異なる特有の呼吸器症状が現れるのです。