街中の流通インフラにおいて、この呼称問題を最も象徴的に示しているのがコンビニ各社の表記と評判です。日常的に店頭を観察すると、業界トップを走るチェーンの間で明確なポリシーの違いが浮かび上がってきます。
なかでも突出しているのが、セブンイレブンがおむすびと呼ぶ理由です。セブン-イレブンの商品棚やプライベートブランド(セブンプレミアム)のパッケージを確認すると、「手巻おにぎり」ではなく頑なに「手巻おむすび」「直巻おむすび」と表記されています。同社の広報発表資料や公式見解によると、1978年にパリパリの海苔を後巻きできる画期的な「フィルム入りおにぎり」を開発・全国展開した際、「人と人との心を結ぶ」「お米の神様との結びつきを大切にする」という企業理念を込め、あえて「おむすび」という品名を採用したという経緯があります。現在に至るまで、この温かみのある商品哲学は崩されていません。
対照的に、ローソンやファミリーマートは「おにぎり」の呼称を前面に打ち出しています。ローソンの「金しゃりおにぎり」シリーズや、ファミリーマートの「ごちむすび(一部高級ラインでのみ『むすび』を使用)」など、基本的には生活者にとって最も直感的で検索ボリュームの大きい「おにぎり」を軸としながら、プレミアム商品や情感を訴求したい特定の限定商品において「むすび」の言葉を戦略的に使い分けています。