受検を控えた保護者のコミュニティでしばしば交わされるのが、「事前に過去問を解かせたり、知育教室で対策をしておいた方が良いのか?」という議論です。ネット上には検査の問題内容を推測して作成された類似ワークや練習ドリルが出回っているケースも見られますが、専門家の立場から断言すると、受検前の事前対策は百害あって一利なしです。
事前練習を絶対に避けるべき最大の理由は、「本来得られるべき公的支援や合理的配慮の機会を奪ってしまうから」に他なりません。事前の反復練習によって検査の課題をクリアしてしまい、子どもの本来の認知力よりも高いIQが算出された場合、学校で特別支援学級や通級指導教室への入級が認められなくなったり、療育手帳の更新で等級落ちや却下になったりする事態を招きます。
その結果、実生活や通常学級の授業についていけず、周囲からの無理解に晒され続けた子どもが、過剰適応による不登校や抑うつ、攻撃性といった「二次障害」を発症してしまうリスクが現場では深刻視されています。
さらに、心理検査には「キャリーオーバー効果(練習効果)」が存在します。一度体験した課題を子どもが記憶していると正確なデータが測定できなくなるため、田中ビネー知能検査やWISCを再受検する場合、原則として最低1年〜2年間のインターバル(期間)を空けることが心理学上の厳格なルールとなっています。ありのままの自然体で臨み、「何に困っていて、どこでつまずくのか」を正しく把握することこそが、検査の本来の目的です。