2010年にサンダンス映画祭で初上映され、ファンタジア国際映画祭などで観客賞を総なめにした本作は、公開から年月を経た現在でも「スプラッターコメディ映画おすすめ」の筆頭として名前が挙がり続けています。低予算のインディペンデント作品でありながら、なぜこれほどまでに熱烈な支持を集めているのか、その理由は緻密に計算された3つの構造にあります。
第1の理由は、ホラー映画における「クリシェ(お約束)」の徹底的な脱構築です。映画史において数え切れないほど描かれてきた「不気味な森の小屋」「粗野な風貌の田舎者」「キャンプにやってくる無防備な若者たち」という構図を配置しながら、視点を180度反転。殺人鬼側に見える男たちを「誰よりも純朴で善良な被害者」として描き、本来なら被害者であるはずの大学生たちを「偏見に凝り固まった加害者」へとスライドさせる脚本の切れ味は圧倒的です。
第2の理由は、主演を務めたタイラー・ラビーン(デイル役)とアラン・テュディック(タッカー役)による絶妙なバディ演技です。気弱で心優しいデイルと、親友思いで頼りになるタッカーの掛け合いは、血みどろのスプラッター描写が続く中でも抜群の安心感と愛嬌を放ちます。ヒロインのアリソンを演じたカトリーナ・ボウデンの自然体な演技も相まって、不条理劇の中に心地よい温かさを生み出しています。
第3の理由は、単なるナンセンスギャグにとどまらない、自己肯定感と対人恐怖の克服を描いた人間ドラマの深さです。自分に自信が持てず、都会の若者に引け目を感じていたデイルが、誤解と惨劇を乗り越える中で内面的な成長を遂げていくプロットは、観る者に爽快な感動を残します。