本作のクオリティを根底で支え続けているのが、日本演劇界屈指の実力派俳優たちが繋いできたハリー・ポッター役の系譜です。2022年の初演開幕時、藤原竜也、石丸幹二、向井理という全く異なる個性を持つ3人がトリプルキャストを務めたことは演劇界に大きな衝撃を与えました。
制作発表記者会見や特番インタビューの場で、初代キャスト陣が残した言葉は今も語り草となっています。藤原竜也は「1ステージ演じるごとに寿命が縮むような感覚。精神的にも肉体的にもこれほど過酷な現場はない」と吐露し、英雄でありながら父親として激しく苦悩するハリーの切迫感を剥き出しの感情で演じ切りました。一方の石丸幹二は「ハリーは完璧な救世主ではない。孤児として虐待された幼少期のトラウマを抱えたまま、不器用に大人になってしまった男の脆さを意識した」と語り、気品の中に深い闇と慈愛を滲ませました。そして向井理は「日常の中で誰もが感じる親子のすれ違いや、背負わされた責任の重さをリアルに提示したい」と、抑制の効いた演技で現代の等身大の父親像を見事に造形しました。
その後、平方元基、大貫勇輔、吉沢悠ら実力派たちがバトンを受け継ぎ、2026年に至るまで独自の解釈が積み重ねられてきました。現在もキャストスケジュールは数カ月先まで公式発表されており、アルバス役やスコーピウス役、ハーマイオニー役やロン役との組み合わせによって、毎公演まったく異なる化学反応が生まれています。ファンが「役者の組み合わせを変えて最低3回は観るべき」と語る所以は、この徹底した多重構造のキャスティングシステムにあるのです。