ヒグラシの鳴き声は単なる風物詩にとどまらず、地域の生態系バランスや森林環境の豊かさを示す「環境指標(バイオインジケーター)」としての側面を持っています。
ヒグラシの幼虫は、スギ、ヒノキ、シイ、カシなどの適度に湿り気のある森林土壌に深く依存しています。都市化によるヒートアイランド現象や過度な乾燥、コンクリート舗装の拡大によって、市街地中心部ではヒグラシの生息適地が減少傾向にあります。一方で、広大な緑地を有する都市公園や社寺林、近郊の里山では現在も安定した個体群が維持されています。
現代の生活環境においてヒグラシの鳴き声を耳にできる場所は、適度な樹冠密度と冷涼な空気循環が保たれている健全な環境の証拠でもあります。自然のサウンドスケープ(音の景観)に耳を傾けることは、私たちが暮らす地域の環境変化に気づく重要なきっかけを与えてくれます。