会場のスケールによって、注釈付き指定席の見え方と受けるインパクトは劇的に異なります。東京ドームや京セラドーム大阪といった「ドーム規模」と、横浜アリーナや有明アリーナ、ぴあアリーナMMなどの「アリーナ規模」における見切れ具合の実態を精査しました。
ドーム会場における見切れ具合と巨大構造物の影
ドーム公演における注釈の主たる要因は、巨大なメインスピーカー群(フライングアレイ)や照明タワーの鉄骨支柱、そして防球ネットの支柱です。
2階スタンド席の前方でありながら、ちょうどセンターマイクの直線上にPAタワーの巨大な骨組みが被るケースでは、「ドラムとベースは見えているが、肝心のボーカルが歌唱中に支柱の完全な死角へ隠れ続ける」という事態が起こります。また、ドームのスタンド最上段(通称・天井席)付近に設定された注釈付き指定席では、上空から吊り下げられた大型ディレイタワースピーカーによってメインスクリーンの中央が真っ二つに遮られ、メンバーの表情アップが確認できないという口コミが後を絶ちません。
アリーナ会場におけるステージサイド席の熱狂と死角
一方、アリーナ会場での注釈付き指定席は、ステージ真横のスタンド最前ブロックに割り振られるケースが目立ちます。ここでは「見切れ」のベクトルがドームとは全く異なります。
ステージ奥に設置されたセットやメインLEDパネルは角度がきつすぎてほぼ視界に入りません。演者がセンターステージや後方へ移動した瞬間は背中を見守る形になります。しかし、演者がステージ袖のサイドデッキへ歩みを進めてきた瞬間、距離はわずか5メートルから10メートル程度に縮まります。通常のアリーナ後方列で双眼鏡越しに見るよりも遥かに生々しい発汗、衣装の揺れ、スタッフと交わす視線までが肉眼で捉えられるため、終演後のSNSでは「実質最前列だった」「目の前でファンサをもらえた」という歓喜の投稿が溢れる現象が起きています。
機材遮蔽物や音響の影響|見え方以外の物理的リスク
注釈付き指定席の検証で見落としてはならないのが、視覚以外の感覚、とりわけ「音響の影響」です。音楽評論家やライブPAエンジニアが指摘するように、現代の大規模ライブにおけるラインアレイスピーカーは、指向性を高度にコントロールして設計されています。
客席エリアの最端に位置する注釈付き席では、メインスピーカーの音響照射エリア(カバレッジ)の外側に外れてしまうケースがあります。その結果、高域が減衰してボーカルの輪郭がこもり、壁面からの反響音や低音の定在波だけが強調される「音の濁り」に悩まされる現場が存在します。さらに、吊り下げスピーカーの真下や真横に位置する座席では、100dB(デシベル)を超える強烈な音圧が直撃するため、耳栓(ライブ用イヤープロテクター)を持参しないと終演後に耳鳴りが止まらなくなる物理的リスクがある点も、知られざる注意点です。