惨劇の直接的な引き金は、単なる経済的窮迫だけにとどまらない。母親の際限ない献金によって大学進学の道を絶たれた被告は、自らの将来像を失った。当初は教団幹部への攻撃を検討していたものの、厳しい警戒網に阻まれる。その矛先が、教団関連団体の集会に祝賀ビデオメッセージを寄せていた政治家へ向かったプロセスこそ、日本中に衝撃を与えた安倍晋三元首相銃撃事件の核心的な動機構造である。
手製銃器の製造や複数回にわたる試射など、被告の行動にはきわめて冷徹な計画性が認められた。一方で、実の母親は事件発覚後も教団への信奉を崩さず、その溝の深さがかえって被告の過激化を拍車させた側面も否定できない。家庭という本来あるべき安全網が機能不全に陥ったとき、どのような心理的葛藤が殺意へと変容したのか、公判手続きを通じてその全貌が徐々に解き明かされつつある。