時代を下ると、桃太郎の物語は権力者にとって都合の良い国家主義の象徴として利用され続けた。特に太平洋戦争中、1945年に公開された長編アニメーション映画『桃太郎 海の神兵』は、桃太郎を日本軍、鬼を欧米列強に見立てて制作された国威発揚のための国策映画であった。
正義の味方が悪を懲らしめるという極めてシンプルな勧善懲悪のフレームワークは、国民の戦意高揚を促す完璧なツールとなったのである。古代の大和王権による吉備征伐から、近代戦における敵国批判まで、桃太郎という物語は常に「我々=正義、他者=悪」という二元論を植え付ける政治的装置として機能してきた背景がある。