エンゼルパイとチョコパイを同列のライバルと捉える人は少なくありませんが、製菓技術と構造の観点から見れば、両者は根本的に異なるカテゴリーに属しています。その決定的な分岐点となっているのが、サンドされているフィリング(中身)と生地の組み合わせです。
森永製菓のエンゼルパイは、水分を適度に保ったビスケット生地で弾力のあるマシュマロを挟み込み、全体をチョコレートでコーティングしています。時間が経つにつれてマシュマロの水分がビスケットへと移行し、独特のもっちりとした一体感が生まれるよう緻密に計算されています。なぜマシュマロなのかという開発の背景には、当時アメリカで流行していた「ムーンパイ」に着想を得つつ、日本人の口に合う軽やかさと伸びのある弾力を実現したいという森永の探究心がありました。
対するロッテのチョコパイは、マシュマロではなくコクのあるバニラクリームをサンドしています。生地自体も硬質なビスケットではなく、しっとり焼き上げたソフトケーキを採用。ロッテが目指したのは「日常で気軽に味わえる本格的な生ケーキ」であり、洋菓子専門店の味わいを常温保存可能なパッケージで再現することでした。口の中でホロリと崩れるケーキ生地となめらかなクリームの口溶けは、エンゼルパイのもちもちした食感とは明確に対極を成しています。