『あとひとつ』という楽曲が、音楽の枠組みを超えて「昭和・平成・令和を通じた日本のスポーツアンセム」として不滅の地位を築いた瞬間が、2013年11月3日に行われたプロ野球コナミ日本シリーズ第7戦(日本製紙クリネックススタジアム宮城)です。
球団創設9年目にして初の日本一に王手をかけていた楽天は、読売ジャイアンツを相手に3対2と1点リードの緊迫した局面で9回表を迎えます。前日の第6戦で160球を投げて完投負けを喫していた絶対的エース・田中将大がリリーフカーに乗らず、右翼奥のブルペンから走ってグラウンドに姿を現した瞬間、場内に『あとひとつ』の前奏が鳴り響きました。
球場の音響オペレーターが田中の投球練習終了に合わせて登場曲の音量を絞った際、スタンドを埋め尽くしたファンから自然発生的に湧き起こったのが、サビ部分のアカペラ大合唱でした。「あと一粒の涙で」「あと一歩だけ前に」というリフレインが小雨降る仙台の夜空に響き渡り、テレビ中継を通じて日本中が鳥肌を立てたこの場面は、音楽とスポーツが完全に魂で同調した名シーンとして今も語り継がれています。