「キムチ鍋は市販のパウチつゆを買ってくるのが一番手軽」という認識は、調味のメカニズムを知ると一変します。料理開発の現場関係者が口を揃えるのは、ストレートつゆと濃縮タイプのキムチの素における「香気成分の保持力」の決定的な違いです。
市販のストレートパウチは、長期常温保存を前提とするため、レトルト殺菌(加圧加熱殺菌)が施されています。この工程でニンニクや生姜の揮発性アロマや、唐辛子のシャープな刺激がどうしても丸くなり、全体が均一で平板な味になりがちです。一方、桃屋やエバラ食品に代表されるキムチの素は、果実や香味野菜、魚介エキスを生の鮮度に近い高濃度状態でボトルに封じじ込めています。加熱殺菌の影響を最小限にとどめたペースト状のベースを、調理の直前に鍋の中で熱湯や出汁と合わせることで、立ち上るニンニクのパンチと魚醤の芳醇な風味が爆発的に活性化するのです。
さらに、野菜から染み出す水分への対応力も決定的な差を生みます。白菜やもやしを大量に煮込むと、ストレートつゆは終盤にかけて水っぽくなり、味がぼやけてしまいます。しかし、キムチの素であれば、素材から出る水分量を計算に入れてスープ濃度をあらかじめ濃いめに設定したり、途中で小さじ1杯を足して味をリセットしたりといった微調整が可能です。最初から最後まで濃厚な輪郭を保ち続けられることこそ、キムチの素で作る鍋が「劇的においしい」と絶賛される最大の根拠です。