本作が誕生した背景には、商業音楽シーンにおける強烈なミッションと格闘した制作のドラマが存在します。学校法人モード学園のCMタイアップ曲として依頼を受けた際、課されたテーマは「情熱を、もっと」。全国規模の大量露出が確約される一方、テレビの数秒間で大衆の耳を奪う圧倒的なキャッチーさが至上命題として求められました。
当時の音楽雑誌のインタビューやメディアの密着ドキュメンタリーにおいて、山口一郎は「自分たちのコアな音楽性を守りながら、いかにしてお茶の間へ届く最強のポップスを作り上げるか」という命題に極限まで追い詰められていたと告白しています。アンダーグラウンドなクラブミュージックの文法と、昭和歌謡や日本文学に通じる叙情詩を衝突させるという、一見すれば水と油の試みでした。
締め切りが迫るスタジオで、サビのメロディと歌詞の組み合わせは数百回にも及ぶ推敲が重ねられました。結果として生み出されたのは、1980年代歌謡曲のような切ないリフレインと、緻密にプログラミングされたBPM130前後の疾走するビートの融合です。コマーシャリズムへの迎合ではなく、大衆音楽という巨大な波を乗りこなしてやろうとするバンドの野心と覚悟が、この音の塊となって結実しました。