岡村孝子の音楽キャリアを振り返る上で、1982年に女子大生デュオ「あみん」としてリリースしたデビューシングル『待つわ』の爆発的ヒットは外せません。ミリオンセラーを記録した同曲の活動休止後、1985年にソロデビューを果たした彼女は、自身で作詞・作曲を手掛けるシンガーソングライターとしての道を歩み始めました。
ソロ初期の試行錯誤を経て、1987年6月20日にリリースされたサードアルバムが『Believe』です。当時の日本社会は男女雇用機会均等法の施行(1986年)直後であり、女性の社会進出が本格化する一方で、職場やプライベートにおける人間関係、将来への不安に直面する女性が急増していました。
当時の制作関係者の回想や音楽メディアのインタビュー資料によると、岡村孝子は「誰かの背中を無理やり押すのではなく、傷ついた心にそっと寄り添い、隣で一緒に深呼吸できるような音楽」を目指していたといいます。大声で叫ぶアジテーションではなく、囁くようなウィスパーボイスと内省的なメロディラインが融合した『Believe』は、まさに時代が求めていた“心の処方箋”として受け入れられました。