地元住民から「極楽湯上尾閉店いつだったのか」「なぜ急になくなってしまったのか」という疑問の声が今なお寄せられます。極楽湯上尾店が惜しまれつつ営業を終了したのは2021年1月31日のことでした。最終日の夜には、長年通い詰めた常連客や近隣のファミリー層が別れを惜しみ、フロント前でスタッフに感謝を伝える光景が各所で見られました。
閉店の背景として取り沙汰された最大の要因、それは定期借地権契約の期間満了です。ロードサイド型の大型温浴施設は、土地オーナーから20年程度の定期借地契約を結んで開業するケースが一般的です。上尾店もまさにその契約満了の節目を迎えていました。契約更新を行うかどうかの協議において、運営側には極めてシビアな経営判断が求められる状況にあったのです。
さらに追い打ちをかけたのが、建物質および配管・ボイラー設備の老朽化でした。開業から約20年が経過した温浴施設では、地下配管の腐食対策や熱源設備の全面刷新に数千万円から億円単位の修繕投資が必要となります。折しも当時は新型コロナウイルス感染拡大に伴う利用控えが直撃し、さらに世界的なエネルギー資源価格の急騰によってガス代・電気代などのランニングコストが前年比で30〜40%以上跳ね上がるという未曾有の逆風が業界を襲っていました。
親会社である株式会社極楽湯ホールディングスは当時、国内外のグループ店舗網における不採算拠点の整理と財務体質の健全化を急ピッチで進めていました。莫大な追加改修投資を行って契約を延長するよりも、契約満了のタイミングで整然と撤退することが企業価値を守るための最善策と判断されたのです。突発的な経営破綻ではなく、冷徹な経営計算と社会環境の激変が生んだ必然の幕引きでした。