米津玄師が放つ色気は、視覚情報だけでなく、その歌声の魅力に深く根ざしています。彼のボーカルを音響学的に紐解くと、以下の要素が複雑に絡み合っていることが分かります。
第一に、低音域における豊かな倍音(低次フォルマント)の共鳴です。語りかけるようなAメロ・Bメロで聴かせるハスキーかつウォームな声質には、耳元で囁かれているかのような親密感を与える音響効果があります。第二に、高音域へと抜ける際のウィスパーボイスとエッジボイス(声帯閉鎖音)の絶妙なコントロールです。張り上げるシャウトの中に意図的に混ぜられる吐息の成分が、楽曲全体に抗いがたい艶をもたらしています。
また、ライブパフォーマンスやMVにおける身体表現の進化も見逃せません。『Flamingo』や『KICK BACK』、『さよーならまたいつか!』などのMVで見せた、ダンサー・辻本知彦氏の振付による身体のしなりやダイナミックな脱力感は、彼特有の手足の長さを最大限に活かした「動的な色気」を確立しました。静止画では味わえない、リズムに身を委ねた瞬間の無防備さと色気爆発のパフォーマンスが、オーディエンスを陶酔させています。