事件の発端は1997年夏、アメリカ海洋大気庁(NOAA)が運用する水中音響監視システム「SOSUS(音響監視システム)」が記録した異常な海洋音でした。冷戦時代に旧ソ連の潜水艦を探知するために構築された高感度の水中マイク(ハイドロフォン)アレイが、南緯50度・西経100度付近(南米チリの沖合、南太平洋の孤立海域)から発せられた極めて強い超低周波を捉えたのです。
その音声データは、周波数が急速に上昇する特徴的なカーブを描きながら約1分間以上持続しました。公開された音声データを16倍速で再生した際の擬音から「Bloop(ぶるーぷ)」と名付けられたこの音は、通常なら減衰してしまう長距離をものともせず、約5,000キロメートル以上離れた複数の受波器に鮮明に記録されました。地球上で知られている最大の生物であるシロナガスクジラですら、これほどの広範囲に轟く音を発することは不可能なため、音響学者たちをも当惑させることになりました。