ワンコインで腹を満たせた時代は終わった。牛丼一杯、あるいはハンバーガーひとつの価格改定がニュースのトップを飾る光景も、いまや日常の一幕に過ぎない。しかし、現場で行われている価格戦略は、単なる原価高騰の転嫁にとどまらない。各社が鎬を削るのは、POSデータと購買履歴をミリ単位で解析し、顧客が「離脱しない限界値」をあぶり出すダイナミックなプライシングの攻防だ。
看板メニューを据え置きにしつつ、サイドメニューやトッピングの組み合わせで客単価を引き上げる巧妙なメニューエンジニアリング。平日昼のビジネスパーソン向けランチと、週末のファミリー層に向けたプレミアムメニューで客層ごとに全く異なる価格グラデーションを描く。価格を上げても客足が途絶えない店舗には、それに見合う空間演出と体験設計が確実に組み込まれている。