ネット上や参拝者の会話で頻繁に耳にする「凶こそが最高の運気である」という説。この背景には、古代中国から伝わる易経や陰陽五行思想の根本原理である「物極まれば必ず反す(物事は頂点に達すると逆方向へ反転する)」という法則が存在します。満月が翌日から欠け始めるように、大吉を引いた瞬間は運気のピークであり、以後は下降線をたどるリスクを孕んでいます。これに対し、おみくじで凶が縁起が良いとされる最大の理由は、現状が「底」であるため、以後は上昇していく未来しか残されていないという運気サイクルの構造にあります。
神社本庁や各地の有力寺社が監修する見解においても、おみくじは吉凶の優劣を競うギャンブルではなく、参拝者へ向けられた「神仏からのパーソナルメッセージ(神意)」と定義されています。凶という結果は、現状の生活態度や判断に潜む落とし穴を事前に知らせるアラート機能にほかなりません。災厄を未然に回避するための具体的な行動指針が凝縮されている点において、ただ浮かれて見落としがちになる大吉よりも、実利的な価値が極めて高いと言えます。