劇中歌および劇伴のすべてを手掛けたRADWIMPSですが、その制作期間は約1年半という異例の長丁場に及びました。新海誠監督は脚本段階から野田洋次郎にプロットを渡し、劇伴のテンポやフレーズに合わせてコンテを修正するという、映像と音楽が双方向に影響を与え合う前代未聞の手法を採用しています。
制作ドキュメンタリーや当時のインタビュー証言によると、特にエンディング曲の着地点については幾度ものディスカッションが重ねられました。当初、新海監督から提示された重厚な物語の幕引きに対し、野田洋次郎が提案したのが、静謐なピアノと独白のような語り口で始まる「なんでもないや」のデモでした。監督はこのデモを聴いた瞬間、「この映画が向かうべき結末はこれしかない」と確信したと述懐しています。
特筆すべきは、アルバム『人間開花』に収録されたオリジナルバージョンと、サウンドトラックに収められた「movie ver.」の明確な違いです。「movie ver.」は、映画のエンドロールの秒数や、階段でのセリフ終わりの静寂から音が立ち上がるタイミングを計算し尽くしてストリングスのクレッシェンドやブレイクが設計されています。一方、後発のオリジナル版は純粋な1曲のポップ・ロックナンバーとして、ベースラインやドラムの音圧がよりリッチに再構築されており、単体楽曲としての完成度を追求した仕上がりとなっています。