エボラウイルスはどこから人間社会に侵入したのか——その謎を解く鍵が「自然宿主(ウイルスを体内に宿しながらも自身は発病・死亡しない生物)」の特定でした。長年にわたる過酷なフィールドワークと遺伝子解析の結果、現在もっとも有力な発生源として結論づけられているのがウマヅラコウモリやフランケオナガコウモリなどの「フルーツコウモリ(オオコウモリ科)」です。
フルーツコウモリは、エボラウイルスに感染しても免疫機構の特殊な働きによって重篤な症状を起こさず、ウイルスを安定して保有し続けることができます。研究チームが熱帯雨林の奥地で捕獲したコウモリの体内からウイルスのRNAや特異抗体が相次いで検出されたことで、コウモリが自然界における巨大なウイルスの貯水池(リザーバー)であることが科学的に証明されました。
近年では、洞窟や密林深くに生息するコウモリが、森林伐採や農地開墾によって生息域を追われ、人間の居住エリアや農園に接近している実態が確認されています。生息環境の急激な変化が、ウイルスのスピルオーバー(異種間伝播)を引き起こす最大の要因となっています。