噂の舞台は、本殿金堂前にある石畳のポイントだ。ここには幾何学模様が施されており、その中心にある三角形のポイントが「宇宙エネルギーの集中する場所」として広く知られている。ネット上では「その三角を踏むとエネルギーの流れを遮断してしまう」「ご利益が消えるので踏んではいけない」といった説がまことしやかに語られてきた。
しかし、歴史と寺側の見解を紐解くと、寺院側が公式に「踏んではいけない」という禁止事項を設けているわけではない。鞍馬寺を総本山とする宗派「鞍馬弘教」の教えにおいて、この場所は宇宙の真理と人間が一体となる象徴的な場と位置づけられている。噂が広まった背景には、パワースポットブームのなかで「聖なる中心点を足蹴にするような行為は不敬ではないか」という参拝者の配慮や敬意が、いつの間にか「NGルール」へと変化して伝播した経緯がある。
意図せず足がかかってしまったからといってバチが当たるわけではない。本質的な問題は、ルールを過剰に気にして恐れを抱くことではなく、そこに込められた信仰の意図を汲み取ることなのだ。