渡辺徹さんの訃報が報じられた際、多くの人々が衝撃を受けた最大の理由は「入院から逝去までの圧倒的なスピード」でした。舞台やテレビ番組の収録など、直前まで精力的に仕事をこなしていた名優の身に、一体何が起きていたのでしょうか。
所属劇団「文学座」および関係者の発表資料によると、体調に異変が生じたのは2022年11月20日のことでした。発熱や激しい腹痛を訴えた渡辺徹さんは、都内の病院を受診。当初は細菌性胃腸炎と診断され、そのまま入院治療に入ることになりました。当初は数日の点滴治療で快方に向かうと考えられていましたが、病魔は予期せぬ速度で全身を蝕んでいきます。
入院から数日後、体内に入り込んだ細菌が引き起こした感染症が制御不能となり、全身に炎症が広がる敗血症を発症しました。医療チームによる集中治療が懸命に続けられたものの、11月28日午後9時1分、家族に見守られながら静かに息を引き取りました。初発の腹痛からわずか8日間という、まさに急転直下の最期でした。
一般的に健康な成人であれば、細菌性胃腸炎が数日で死に至るケースは極めて稀です。しかし渡辺徹さんの場合、次項で詳述するように長年付き合ってきた複数の基礎疾患によって、感染に対する身体の防御機能が著しく低下していたことが、この急激な病状悪化の決定的な要因となったと見られています。