平成から令和への代替わりにおいて、政府および法制局が最も神経を尖らせた論点の一つが「二重権威の回避」でした。2017年6月に成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の審議過程において、退位された後の上皇陛下の誕生日(12月23日)を祝日として残すか否かは極めて重大なテーマとして扱われました。
日本国憲法第1条において、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と規定されています。象徴としての権能や国民統合の中心は、常に在位中のただ一人の天皇に一本化されていなければなりません。もし上皇陛下がご存命のまま12月23日を国民の祝日として維持し続ければ、国民の祝意が新旧両陛下に分散し、あたかも「二人の天皇」が存在するかのような二重権威の印象を国内外に与えてしまう危険性がありました。
当時の国会審議や法制局の検討資料においても、上皇陛下の誕生日を祝日として存続させることは「象徴の統一性」という憲法の精神に照らして適切ではないと判断されました。宮内庁関係者の証言によれば、上皇陛下ご自身も「自らの存在が新天皇の活動の妨げになってはならない」という強いお考えをお持ちであり、自らの誕生日が平日となる措置について異を唱えられることは一切ありませんでした。結果として、2019年5月1日以降、12月23日は祝日法の規定から外れ、平日へと移行したのです。