近年の紅白歌合戦を観察すると、紅組・白組の対戦枠とは別に、「特別企画枠」が異常なほどの存在感を放っています。松任谷由実、桑田佳祐、矢沢永吉といった日本音楽界のリビングレジェンドから、国民的アニメのタイアップ企画、さらには周年を迎えたベテランバンドまで、勝敗の枠組みを超えた出演が常態化しました。
この特別企画枠が増加している背景には、NHK側の明確な防衛策があります。「白組・紅組」という従来の枠組みに当てはめると、落選した際のファンからの反発や、勝敗を気にする大御所アーティストのプライドを刺激してしまうリスクがあります。特別枠として遇することで、アーティスト側は「対決」ではなく「ゲストとしての祝祭」としてオファーを受けやすくなるのです。
また、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視するZ世代に向け、曲と曲の間をシームレスにつなぎ、目まぐるしくステージを転換させる演出は、まるで「テレビで見られる巨大音楽フェス」のような様相を呈しています。しかし、この急速なフェス化に対しては、「演歌歌手の出番が削られすぎている」「家族全員で炬燵を囲んで見る番組ではなくなった」というシニア層からの批判も根強く残っており、NHKは今、伝統と革新の間で極めて繊細な舵取りを迫られています。