山崎努と黛ひかるの出会いは、山崎努が俳優として頭角を現し始めた1960年代初頭にさかのぼります。山崎努は1959年に劇団文学座に入所し、舞台や映画で頭角を現していました。舞台関係者の紹介や芸術・演劇関係の集まりを通じて出会った二人は、互いの表現に対する情熱と誠実な人柄に惹かれ合い、交際へと発展しました。
当時の山崎努は、黒澤明監督の映画『天国と地獄』(1963年)で誘拐犯・竹内銀次郎役という大役を射止め、日本中から凄烈な脚光を浴びていた時期でした。若手実力派として過酷なプレッシャーに晒される中、精神的な支えとなったのが黛ひかるでした。二人は1963年前後に結婚し、以来、芸能界の荒波に揉まれながらも一度も破局の危機が報じられることなく、確固たる家庭を築いてきました。
山崎努はかつてのインタビューやエッセイにおいて、家庭での自身について「決して器用な夫でも父親でもない」と振り返ることがありましたが、妻への敬意を常に欠かしませんでした。華やかな演劇界出身でありながら、一歩引いて夫の役作りを尊重し続けた妻のスタンスが、山崎努という怪優のキャリアを支え続けたと言えます。