映画館の売店で販売されるポップコーンは、Mサイズで500〜600円、Lサイズで700〜900円程度に設定されています。「スナック菓子としては割高ではないか」と感じる鑑賞者も少なくありませんが、この価格設定には劇場の死活問題が直結しています。
業界の仕入れデータや飲食原価の積算に基づくと、ポップコーン1杯(Lサイズ相当)の原材料費は以下の通り試算されます。
- 乾燥トウモロコシ(バタフライ型・マッシュルーム型コーン):約15〜25円
- 専用オイル(ココナッツオイル等)および調味料(フレーバーソルト等):約10〜20円
- 紙製専用パッケージ(カップ・ボックス):約15〜25円
合計の原材料原価は1杯あたり約40〜70円程度であり、原価率はわずか5%〜10%未満にとどまります。一般的な飲食店の原価率が30%前後であることを踏まえると、圧倒的な高利益率です。
なぜ劇場はこれほど高い粗利を必要とするのでしょうか。その理由は、映画興行の収益分配システムにあります。映画館の入場料金(チケット売上)のうち、通常50%〜60%前後は「フィルムレンタル料(映画配給会社・スタジオへの分配金)」として劇場の外へ流出します。チケット代単体では、劇場の巨大なハコモノ維持費、最新鋭プロジェクターや音響設備の減価償却費、人件費を賄うことは極めて困難です。
対照的に、売店で販売したポップコーンやドリンクの売上は、仕入れ原価と消費税等を除いた利益のほぼ100%が劇場の収益となります。つまり、「映画チケットで人を集め、コンセッションのポップコーンで劇場の固定費を回収し利益を出す」というビジネスモデルこそが、シネマコンプレックスの運営を成立させている生命線なのです。