敬語の使い分けで混乱した際は、文の「主語」が相手側(立てるべき人物)にあるのか、それとも自分側(身内を含む)にあるのかを立ち止まって確認するのが確実な近道です。謙譲語と尊敬語の違いは、視点のベクトルが真逆である点に集約されます。
相手や取引先が「知っている」状態を敬う場合は尊敬語を用います。最も一般的な表現は「ご存じ」であり、動詞の形を保つ場合は「お知りになる」となります。一方、自分や自社の人間が「知っている」ことをへりくだって伝える場合は謙譲語を使います。対象が人物であれば「存じ上げる」、事実や情報であれば「存じております」を選択するのが日本語の正しい構造です。
日常会話で使われる「知っています」「知りません」は知る丁寧語に過ぎず、対等な立場や同僚間での使用にとどまります。社外の取引先や上司に対して丁寧語だけで応対すると、敬意が不足し、どこか事務的で冷淡な印象を与えてしまう原因になります。