当時のワイドショーや週刊誌は、この決裂を「恩知らずの歌姫 vs 剛腕マネージャーの金銭トラブル」としてセンセーショナルに書き立てました。しかし、現場をよく知る興行関係者や当時のスタッフの証言を丹念に追うと、単純な善悪二元論では語れない複雑な人間模様が浮かび上がります。
関係者の一人は当時の様子をこう振り返っています。
「細木さんは確かに口が悪く、取り巻きの前でも島倉さんを容赦なく叱り飛ばしていました。しかし、興行界の海千山千の男たちを相手に島倉さんを守るためには、それほどの威圧感と非情さを持たなければ絶対に務まらなかったのも事実です。一方で島倉さんは、ステージ上では可憐なお千代さんですが、芯には誰にも譲らない頑固な芸術家肌のプライドがありました。水と油の二人が極限状況で手を組んだこと自体が、奇跡であり悲劇の始まりだったのです」
ネット上の知恵袋や掲示板などでは、「細木数子は島倉千代子の財産を搾取した悪徳興行主だったのではないか」「いや、島倉千代子が世間知らずで甘えていただけだ」と極端な二者択一で議論されがちです。しかし実際の記録が示すのは、「細木数子の剛腕がなければ島倉千代子の命も歌手生命も終わっていた」という厳然たる事実と、「細木数子の過剰な支配欲が島倉千代子の独立心を限界まで追い詰めた」という双方の真実です。