近年、SNSや動画プラットフォーム上では「結婚式を100万円値引く方法」「格安DIY術」といった情報が氾濫しています。しかし、ネット上の断片的な節約ノウハウを鵜呑みにした結果、重大なトラブルや人間関係の亀裂に直面するカップルが後を絶ちません。
最も危険な誤解が、「料理・ドリンクや引き出物のランクを削って節約する」という判断です。結婚式の費用項目の中で、料理・引き出物は「ゲストへの直接的なおもてなし・還元」に該当します。3万円のご祝儀を包んで貴重な休日を割いてくれた参列者に対し、明らかに品数の少ない料理や安価なギフトを提供することは、ゲストの満足度を著しく損ないます。ネットの口コミや噂でも「〇〇の式は料理が少なくて帰りにラーメンを食べた」「引き出物がペラペラで驚いた」といったネガティブな評価が後を絶ちません。節約すべきは「自己満足になりがちな過剰演出や式場の中間マージン」であり、ゲストの口に入るものや持ち帰る品を削るのは本末転倒です。
また、「すべてを手作りすれば安上がりになる」というDIY神話の落とし穴も無視できません。ウェルカムボード、席次表、プロフィールムービーなどの自作は確かに直接費用を削れますが、専用ソフトウェアの導入費用、上質紙やプリンターインクの消耗、フォントやBGMの著作権申請(ISUM申請代行費用)などで意外な出費がかさみます。さらに、挙式直前の新郎新婦が連日徹夜作業に追われ、疲労困憊で当日を迎えてしまったり、夫婦間で「自分ばかり作業している」と大喧嘩に発展したりする事例は枚挙にいとまがありません。
ブライダルにおける出費の暴走は、行動経済学における「サンクコスト(埋没費用)効果」と「メンタル・アカウンティング(心の家計簿)」によっても裏付けられます。数千円の日常の買い物には慎重な人が、数百万円単位の契約を前にすると「せっかくここまで払ったのだから、プラス5万円で写真を高画質にしよう」「一生に一度だから妥協したくない」と、金銭感覚の麻痺(いわゆるブライダルハイ)を起こします。この心理的バイアスを自覚できないことこそが、見積もり肥大化の真の黒幕と言えます。