「痛くないなら、このまま一生放置しても良いのではないか」と考える受診忌避者は少なくありません。しかし、粉瘤のタイムラインを追っていくと、放置がもたらす代償の大きさが浮き彫りになります。
フェーズ1:初期潜伏期(2mm〜5mm程度)
米粒大から小豆大のサイズ。痛みはなく、触れるとわずかに硬い芯のような感覚があるのみ。中央に微小な黒点が見える。この段階で受診すれば、わずか数ミリの最小侵襲手術(くり抜き法)で、傷跡もほぼニキビ跡程度で完治させることが可能です。
フェーズ2:漸増期(1cm〜3cm程度)
数ヶ月から数年の年月をかけて、袋内部に角質が堆積し続けます。ピンポン玉やうずらの卵ほどの大きさに肥大化し、皮膚が薄く引き伸ばされて外見的にも目立つようになります。衣服の擦れや無意識の圧迫によって内部の微小断裂が起きやすくなり、いつ炎症を起こしてもおかしくない「時限爆弾」の状態です。
フェーズ3:急性炎症・自潰期(3cm以上〜鶏卵大)
疲労や摩擦をきっかけに細菌感染や嚢腫断裂が起き、突如として赤紫色の巨大な熱感を帯びた腫瘤へ急変します。自重や内圧に耐えかねて皮膚が自潰(自然に破裂)すると、黄色ブドウ球菌や大腸菌混じりの膿と腐敗した角質が混ざり合い、強烈な悪臭を放つ浸出液が数日間にわたって漏れ出し続けます。 巨大化してから手術を行う場合、伸び切って壊死した皮膚組織を含めて紡錘形に大きく切除し、何層にも縫合する必要が生じます。初期であれば3ミリ程度の傷で済んだものが、5センチ以上の明らかな手術痕として一生残る結果になるのです。