インターネット上の掲示板やSNSでは、「花粉症の薬を飲み始めてから喉が異常に痛くなった」という声が散見されます。この現象は単なる思い込みではなく、薬理学的な根拠が存在します。
アレルギー性鼻炎の主軸となる抗ヒスタミン薬は、アレルギー症状を引き起こす受容体をブロックする薬剤です。しかし、多くの抗ヒスタミン薬は微弱ながら神経伝達物質アセチルコリンの働きを抑える抗コリン作用を併せ持っています。アセチルコリンは唾液腺の分泌を促進する役割を担っているため、これが抑制されると唾液の分泌量が急激に減少します。
唾液には、抗菌作用を持つリゾチームやIgA抗体、粘膜を保護するムチンが含まれています。抗コリン作用によって口や喉が渇くと、喉の自浄作用と防御壁が一気に失われます。その結果、わずかな空気の乾燥や発声による摩擦だけでも強い痛みを感じるようになり、「薬を飲んでいるのに喉が痛い」というジレンマに陥るわけです。
近年の第2世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジンやビラノア、ルパフィンなど)は、第1世代(クロルフェニラミンなど)に比べて抗コリン作用が大幅に軽減されています。それでも、体質や体調、あるいは市販の複合鼻炎薬に含まれる血管収縮薬や鼻汁分泌抑制薬(ベラドンナ総アルカロイドなど)の影響により、顕著な口渇・咽頭痛をきたすケースは依然として少なくありません。