ネット上の情報や職人間で囁かれる噂の中には、制度の誤解に基づいた危険な言説が散見されます。特に多いのが「個人事業主で許可を取っても、どうせ近いうちに法人化するなら二度手間になり、許可番号も失効して無駄になる」という言説です。
これはかつての古い法制度に基づいた誤解です。2020年10月施行の建設業法改正によって「事業承継・認可制度」が新設され、現在では個人から法人成りする際の許可承継が極めてスムーズに行えるようになりました。事前の認可申請を行うことで、個人事業主時代に取得した建設業許可の「許可番号」をそのまま新設法人へと引き継ぐことが可能となり、営業停止期間(無許可期間)を生じさせることなく法人化へ移行できます。
ただし、ここには実務上の決定的な注意点が存在します。個人の事業を廃止し、株式会社や合同会社を設立した「後」に認可申請を出すことはできません。必ず会社の設立登記や事業譲渡を行う「前」に都道府県へ承継の事前認可申請を行い、認可の効力発生日と同日に法人設立および事業譲受のスケジュールを合致させる緻密な進行管理が求められます。この手順を誤ると、個人許可を一度廃業届で抹消し、法人として一から新規申請(手数料9万円が再発生)をやり直す羽目になるため細心の警戒が必要です。
また、「個人事業主には決算変更届の義務はない」という噂も完全な誤謬です。許可を受けた建設業者は、個人・法人を問わず、毎年の事業年度終了後4カ月以内に「決算変更届(決算報告)」を都道府県知事に提出しなければなりません。これを怠ると、5年ごとの許可更新が受けられなくなるだけでなく、建設業法違反として罰則の対象となります。