夜間救急動物病院の現場取材や症例データから浮かび上がるのは、飼い主が「少し様子を見よう」と判断した後の急激な容態悪化です。
犬が乾燥剤を摂取してから中毒症状が現れるまでの時間は、物質により明確な時間差が存在します。生石灰の場合は口にした直後から数分以内に激しい痛みを訴え、よだれを大量に垂らし、前足で口元を引っ掻く動作を見せます。一方、鉄粉を含む脱酸素剤による鉄中毒は、摂取後1時間から6時間ほど経過してから激しい嘔吐や下痢が始まり、12〜48時間後に肝臓障害へと移行します。
「乾燥剤の中身」だけに目を奪われ、見落とされがちなのが包材フィルムそのものによる物理的閉塞です。実際に、シリカゲル自体は無害であったにもかかわらず、犬が乾燥剤を袋ごと食べたことで腸閉塞を起こし、開腹手術に至ったトイ・プードル(体重2.8kg)の臨床報告があります。
プラスチックフィルムや不織布は胃液で一切消化されません。胃の出口である幽門部や小腸の細い内腔に引っかかると、24〜72時間後に頻回の嘔吐、食欲不振、腹囲膨満、排便停止といった典型的な腸閉塞兆候を示します。腸壁が壊死すれば腹膜炎から敗血症を併発し、治療費も数十万円規模へと跳ね上がります。「毒性がない=安全」ではないという事実を現場の獣医師は強く警告しています。