トラウマインフォームドケアとは?現場が変わる原則と再トラウマ防止策

トラウマインフォームドケアとは?現場が変わる原則と再トラウマ防止策

トラウマインフォームドケアとは?現場が変わる原則と再トラウマ防止策についての最新情報をご紹介します。

医療機関や福祉施設は、本来であれば傷ついた人々が心身を休め、回復を果たすべき安全なシェルターです。ところが、皮肉にもその「支援の場」そのものが、過去の恐怖や無力感をフラッシュバックさせ、当事者を再び深く傷つけてしまう悲劇が後を絶ちません。これこそが支援現場において最も警戒すべき「再トラウマ化(Re-traumatization)」の現実です。

閉鎖的な病棟での隔離・身体拘束、事前の説明を欠いた強引な処置、上から目線の生活指導、さらにはプライバシーが担保されない面談室での問診。これらは管理運営の都合から「やむを得ないルーチン」として処理されてきましたが、過去に虐待や監禁、身体的暴力を受けたサバイバーにとっては、かつての加害状況と残酷なまでに相似した構図を作り出します。「力による支配」を再び突きつけられた当事者は、激しい攻撃性を見せるか、あるいは完全に心を閉ざす解離状態に陥り、医療・福祉不信を決定的に深めてしまうのです。

厚生労働省の報告や精神保健福祉改革の議論でも、身体拘束の最小化や行動制限の妥当性が厳格に問われる転換点を迎えています。小児期逆境体験(ACEs)研究が示す通り、複雑なトラウマを抱えた当事者は精神疾患のみならず、依存症、生活習慣病、慢性疼痛など多様な主訴で一般医療・福祉の窓口に現れます。トラウマを「一部の特別な人が抱える傷」ではなく、「誰もが持ち得る潜在的要因」と見なすユニバーサル・プリコーション(普遍的予防策)の徹底が、現場の安全を確保する生命線となっています。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。