レスポール・スタンダードの歩みを振り返る上で、多くのプレイヤーを混乱させるのが「トラディショナル(Traditional)」という派生モデルの存在です。この2つの関係を紐解くには、ギブソンの波乱に満ちた歴代仕様の歴史を理解する必要があります。
1980年代から2000年代初頭にかけて、ギブソンUSAは重量過多を防ぐためにボディ内部に9つの穴を空ける「スイスチーズ・チェンバー(ウエイトリリーフ)」を施していました。ところが2008年、当時のレスポール・スタンダードは大胆な近代化を敢行します。内部を大きくくり抜いた「チェンバード構造」、基板配線、非対称ネック、ロック式ペグなど、ハイテク仕様へ舵を切ったのです。
これに対し、「伝統的な重厚さと完全ソリッドに近い構造を守ってほしい」という世界中のファンから強い反発が巻き起こりました。その受け皿として2008年に投入されたのがレスポール・トラディショナルでした。その後、2010年代のスタンダードはコイルタップやフェイズ切り替えなど多機能化を極め、トラディショナルは原点回帰の象徴として並行販売される構図が続きました。
転機が訪れたのは2019年、経営陣の刷新に伴うラインナップの再編です。ギブソンはファンが長年求めていた「余計な配線基板を廃し、ウェイトリリーフを行わない完全ソリッドボディ、ハンドワイヤードのオレンジドロップ・キャパシター」という本来の仕様を「Original Collection」のレスポール・スタンダードとして復活させました。この統一によりトラディショナルはその役目を終えて生産終了となり、現在は「スタンダード 50s」「スタンダード 60s」の2本柱に統合されています。