なぜこれほどまでに旅人を虜にするのか。その核心に迫るべく取材を試みると、宿の背骨とも言えるこだわりが見えてきた。「カニは生き物。水揚げされたその瞬間の勢いと状態を見極める目利きがすべてを決める」と熱く語るのは、館主(松林氏)だ。セリ場で長年培われた鋭い眼光は、甲羅の硬さや脚の詰まり具合を瞬時に見抜き、納得のいかない食材は一切仕入れないという徹底ぶりを見せる。
さらに、館主(松林氏)が目指すのは単なる満腹感ではない。「遠くから時間をかけて来てくださるお客様に、一生記憶に残る一口を届けたい」という執念にも似た情熱が、料理の細部にまで宿る。接客においても過度なマニュアル感を排除し、一人ひとりの好みに合わせたアットホームな距離感を保つ。この温かなもてなしと料理の完成度が見事に融合しているからこそ、驚異的なリピート率が維持されているのだ。