結論から述べると、日本の刑法や各種法令において「犯罪者予備軍」という法律上の定義は一切存在しません。法制度上、人間を「将来罪を犯す可能性がある集団」として分類・定義する枠組みはなく、あくまで一般社会やメディア、インターネット上で生まれた俗称・レトリックに過ぎないのが実態です。
類似する表現として「犯罪予備軍」という言い回しも使われますが、両者に法的な違いはなく、いずれも特定の個人や属性を警戒・批判する目的で使われる通称です。ただし、刑法には「予備罪(殺人予備罪、放火予備罪など)」という明確な規定が存在します。これは特定の重大犯罪を実行するために、凶器の調達や現場の下見など「客観的かつ具体的な準備行為」を行った場合に初めて成立する罪です。心の中で危険な思想を持っていたり、不審な言動をしていたりする段階だけで罪に問われることはありません。
ネット空間における「犯罪者予備軍」という表現は、過激な投稿をするアカウントや社会規範から外れた言動を取る人物を排斥するためのネットスラング・レッテル貼りとして定着してきました。法的根拠のないまま他者を断罪する言葉として流通している点に、この表現の本質的な危うさがあります。