税制の理念以前に、走行距離課税の実現を阻む最大の障壁といえるのが「実務上の徴収メカニズム」と「プライバシーの侵害」という2つの難題だ。
まず、個々の車両が走った距離を誰が、どのように正確に把握するのか。車検時のメーター確認を利用する案が論じられるが、車検は通常2年に1回(新車時は3年)しかなく、毎年の公平な課税には向かない。また、メーターの巻き戻しや不正改ざんといった不正行為を完全に防ぐことは極めて困難だ。
もうひとつの有力案が、通信機能を持つ車載器やGPS装置の全車義務付けである。しかし、これは国家に「国民がいつ、誰と、どこを、何キロで走ったのか」という私的な移動履歴を常時監視・追跡されるリスクを意味する。個人の行動ログがプライバシーの領域を侵害することは明白であり、国民的な合意形成を得るのは至難の業だ。これらを管理運営するためのシステム構築費や人件費が膨らみ、税収よりも徴税コストが上回りかねないという構造的欠点も指摘されている。