CTEPHに関する最大の落とし穴は、一般的な健康診断や通常の人間ドックではほぼ100%見逃されるという点です。
胸部X線(レントゲン)検査や一般的な心電図検査では、病気が末期近くまで進行して右心室の著しい肥大が起こらない限り、決定的な異常陰影としては現れません。血液検査でも特異的なマーカーは存在せず、心不全マーカーであるBNPやNT-proBNPの上昇が見られる程度にとどまります。このため、「健診で異常なしと言われたから大丈夫」という思い込みが、重症化を招く主因となっているのです。
病気を確実に炙り出すために不可欠なのが、「肺換気・血流シンチグラフィ」と呼ばれる核医学検査です。放射性同位元素を含んだ薬剤を静脈に注射し、肺全体の血流分布を撮影することで、空気が吸えているのに血流が途絶えている部分(換気・血流ミスマッチ)を一目で特定できます。
ネット上には「造影CTを撮れば十分」という誤解も散見されますが、末梢の細かい血管にへばりついた慢性血栓は高解像度CTでも描出が困難なケースがあります。日本循環器学会のガイドラインでも、CTEPHのスクリーニングにおいて「肺シンチグラフィを省略してはならない」と強く推奨されています。