極限まで追い詰められていた剛の異変に、いち早く気づいたのが大先輩のトミーズ雅でした。剛のただならぬ痩せ細り方と怯えた表情を見逃さなかった雅は、周囲の芸人が腫れ物に触るように距離を置くなか、躊躇なく剛を呼び出しました。
雅は剛の目をまっすぐ見つめ、「お前、それパニック障害や。オカン(病院)連れてったる。大丈夫や、絶対に死ねへんから」と断言。病名を明確にラベリングし、生命の危険がないことを力強く伝えることで、剛が抱えていた漠然とした死への恐怖を取り除いたのです。
雅のアクションは言葉の励ましにとどまりませんでした。2001年4月にスタートした毎日放送の情報バラエティ番組『せやねん!』の立ち上げに際し、雅はまだ本調子ではない中川家のレギュラー起用を強く推挙しました。番組プロデューサーやスタッフに対し、雅は事前に以下の条件を呑ませたといいます。
「剛が本番中にしんどくなったら、いつでもスタジオからハケさせてええ。その代わり、番組の空気が崩れたら全部俺が責任取って笑いに変えたる」
生放送中にパニック発作が起きても逃げ場があるという「究極の心理的安全性」を与えられた剛は、プレッシャーから解放され、少しずつスタジオの空気に馴染んでいくことができました。雅のこの采配こそが、剛が芸人として息を吹き返す決定打となったのです。