これまでまとまって眠っていた赤ちゃんが、生後8〜9ヶ月頃に突如として深夜に何度も激しく泣き叫ぶようになる現象は、世界中の小児睡眠医学で「9ヶ月睡眠退行(9-Month Sleep Regression)」として広く認識されています。
夜泣きがひどくなる背景には、単なる機嫌の良し悪しではなく、脳と神経回路の急激な発達に伴う3つの科学的要因が存在します。
第1に、日中の運動機能獲得に伴う脳の過活動です。ハイハイやつかまり立ちといった劇的な身体操作を覚えた脳は、夜間のレム睡眠中にも神経シナプスの再編を活発に行っています。昼間の興奮や「身体を動かしたい」という無意識の衝動が睡眠中にシグナルとして発火し、中途覚醒を引き起こします。
第2に、「分離不安」と睡眠環境の認知です。寝かしつけられた時と異なる状況(例:抱っこで寝たのにベッドに置かれている)で夜中に浅い眠りになった際、強い不安と違和感を覚えて激しく泣いて訴えるようになります。
第3に、日中の睡眠スケジュールの崩れ(過疲労)です。体力がついたことで朝寝・昼寝のタイミングが狂い、過度の疲労物質(コルチゾール)が分泌されて覚醒状態から抜け出せなくなるパターンです。