本作の放送中、毎話のようにSNS上で賛否が真っ二つに割れた最大の要因が、2018年夏(放送当時)を舞台にした現代オリジナルパートの存在でした。第1話の冒頭、スーツケースを引いた近江佳代(榮倉奈々さん)が、恋人の江口佳代(伊藤沙莉さん)とともに呉の古民家を訪れる場面から物語が動き出します。原作漫画やアニメーション映画版には一切存在しないこのパートに対し、リアルタイム視聴者からは次のような戸惑いと批判の声が相次ぎました。
「昭和の戦時下の空気感に深く没入していたところで突然、現代のポップな描写に切り替わり、感情のテンポが遮断されてしまう」「原作が持つ無駄のない完成度をなぜ崩すのか」といった指摘が、ネット掲示板やレビューサイトを賑わせたのも事実です。特にアニメ映画版の純度の高い演出に魅了されたファンほど、現代パートの挿入に強い違和感を抱く傾向が見られました。
しかし、名手として知られる脚本家・岡田惠和氏と制作統括陣がこの演出を取り入れた背景には、明確な危機意識がありました。放送当時の特番インタビューや制作発表記者会見において、スタッフ陣は「戦争体験者が急速に減少する中、この作品を『70年以上前の遠い過去の出来事』として客観視してほしくなかった」と意図を明かしています。劇中で描かれるすずたちの営みは、現代の私たちが生きる日常と一本の線でつながっているというメッセージを具現化するため、榮倉奈々さん演じる佳代という「現代の観察者」を配置したのです。
物語が終盤に進むにつれ、現代パートの佳代が実は広島で被爆した孤児の流れを汲む人物であり、すずが戦後に引き取った少女(節子)の血縁・記憶と深く結びついていることが判明します。最終話において、すずが遺した繕いものの痕跡や家屋のぬくもりが73年の時を超えて現代の若者へと手渡される瞬間、それまでの批判は一変し、「現代パートがあったからこそ、戦争の悲哀が他人事ではなく胸に突き刺さった」という深い感銘の声へと昇華しました。