映像化にあたり、文芸ファンを中心に注目されたのがドラマESCAPE原作との違いです。原作となった北欧のベストセラー心理ミステリー小説『Flykten(逃亡者)』とドラマ版では、物語の着地点に大きなアレンジが施されています。
最大の変更点は、「黒幕の最終的な処分」です。原作小説では、黒幕は施設崩壊とともに自ら命を絶ち、主人公もまた深い絶望を抱えたまま孤独に生還する完全なノワール文学の結末を迎えていました。しかし、ドラマ版の脚本チームは、主人公と黒幕の「対話」に重点を置き、共依存の軛(くびき)から精神的に抜け出すプロセスを描き直しました。
演出面でも、原作の寒々とした雪原の孤島から、無機質で近代的なコンクリート打ち放しの建築物へと舞台を変更。閉塞感と冷徹さを強調したカメラワークが、登場人物たちの内面にある孤独を視覚的に際立たせる効果を生み出しています。