古代の知恵から近代戦に至るまで、軍事史のページをめくれば、兵站を制した者が歴史を動かしてきたことがよくわかる。
中国古代の偉大な軍事思想家である孫武は、その著書『孫子』の中で「車千両、馬千匹、衣糧千重」を運ぶコストと労力の膨大さに言及し、自国から遠く離れた場所での長期戦がいかに国家を疲弊させるかを説いた。兵站の過酷さと重要性を、約2500年も前に喝破していたのだ。
一方で、兵站の軽視が壊滅的な敗北を招いた象徴的事件が、ナポレオン・ボナパルトによる1812年のロシア遠征である。無敵を誇ったグランダルメ(大陸軍)は、ロシア側の焦土作戦と過酷な冬によって補給線を遮断され、戦闘ではなく飢えと寒さによって崩壊した。天才戦術家ナポレオン・ボナパルトであっても、兵站という物理的限界を超えることはできなかったのである。